医学研究一覧

インパクト・ファクター

 

世界には多くの医学雑誌が存在しますが、その質は玉石混交です。

 人には1日24時間という極めて限られて時間しかないので、無駄な論文や意味の無い論文を読むことに時間を割くことは人生を無駄に使うことにります。貴重な人生の時間を無駄に使っていたら、素晴らしい成果など手に出来ません。そこで「読むに値する論文」を見定めなければなりません。読むに値する・時間を費やすに値する「良い論文」が掲載されている雑誌を探す必要があります。

 雑誌の「質」を示すものとしてインパクト・ファクター (Impact Factor: IF) が公開されています。「雑誌の名前」「インパクト・ファクター」で検索すると各雑誌の IF が調べられます。IF の高い雑誌は、信頼できる、読むに値する論文が掲載されている雑誌です。低い雑誌は、その掲載されている論文の信頼性は低く、読むに値しない論文でしょう。

 ちなみに、医学雑誌の最高峰 NEJM (The New England Journal of Medicine) の IF は(2023年6月現在)176.082 です。私が大学院生の頃(30年前)には「IF が3未満の雑誌の論文は読むに値しない」と良く言われていました。

 皆さん(特に初心者)は IF の高い論文の雑誌を(頑張って)読んでみて下さい。特に、研究室で行われる抄読会の時に IF 3 未満の雑誌の論文などを読んで、皆に提示したりすると、皆から「貴重な時間を返せ!」と叱られることがあるので、特に抄読会では「良い論文」を読みましょう。

(勿論、論文は英語です。科学者・医学者の世界の公用語は英語なので、英語論文のみが最新のデータが発表されている雑誌です)

2023年06月28日

Pub Med サーチ

 

医学に関する知識を得るためには最新の信頼できるデータを手に入れなければなりません。

 この時に、「教科書の内容」は古いものばかりで、あまり役に立ちません。そこで、多くの医療者・医学研究者が用いているのが Pub Med という無料の検索サイトです。

 このサイトで、自分が調べたいキーワードを入れると、その言葉が使われた論文が全て出てきます。20年前ー30年前の論文でも出てきます。この中で IF の高い雑誌に載っている論文を選んで読むことで、多くの医療者・医学研究者は、その知識を最新のものにしています。

 勿論、検索ワードだけだと、玉石混交の、物凄い数の論文がヒットするので、IFの高い雑誌に絞って検索するのが良いかもしれません。例えば、「CAR-T」 について Nature 誌に掲載されたものだけを検索するときには「CAR-T, Nature[jo]」と打ち込めば、その条件に合った論文だけが結果に表示されます。

 質の高い・信頼できる研究室からは、繰り返し IF の高い雑誌に優れた論文が発表されるので、研究室の教授の名前で検索することも良い論文を探すには良い方法です。

 スタンフォード大のクリスタル・マッコール教授は CAR-T に関して数々の優れた論文を発表しているので、彼女の CAR-T に関する論文を探すのも、良い論文を効率的に探す方法です。「CAR-T, Mackall C[au]」と検索すれば、その条件にあった論文だけが表示されます。

 みなさんも、上手に Pub Med を使いこなして、効率的に良い論文を見つけて勉強して下さい。

(多くの大学や研究所では、所属の学生や職員が図書館で購読契約されている国際雑誌の論文(全文)に自宅からでもアクセスできるようにしています。論文の PDF を自分のタブレットやスマート・フォンに落として読みたい時は、図書館の方に相談してみて下さい)

2023年06月28日

ゲノム・ブラウザ


ヒトの遺伝子構造は完全に解明されており、その情報は誰でも手に取ることが出来る。ゲノム情報やメッセンジャーRNA情報、染色体上の位置情報、蛋白構造の情報など、沢山の情報をまとめたサイトが、これらを情報を探す際には大変便利である。


 多くの医学研究者が使っているサイトにカリフォルニア大学サンタクルーズ校 (UCSC: University of California, Santa Cruz) のゲノム・ブラウザがある。

メイン・メニューの「Genome Browser」をクリックしてゲノム画面に進んだ後、一番上のボックスに遺伝子名を打ち込めば、その遺伝子構造が表示される。染色体上の位置やエクソン・イントロン構造のシェーマが出てくる。

 更に画面内の遺伝子の名前をクリックすれば様々なデータ・ベース・サイトへのリンクが整理されて表示される。

このサイトは無料である。更に、全てのリンク先が無料で閲覧できる。全世界の、全ての人に無料で公開されている。

科学の発展のためには得られた情報を無料で公開することが重要である。それは世界中の科学者のルールである。

2023年06月29日

BLAST サーチ


DNA配列の相同性を検索するために使うのが BLAST サーチです。これで、どんな DNA配列も、その由来を見つけることが出来ます。どんな遺伝子の一部なのかが直ぐに解ります。

2023年06月29日

ORF ファインダー


cDNA 配列を手にした時にコーディング領域とアミノ酸配列を確認するためのソフト・ウエアがORF Finder (ファインダー)です。
 結果が出たときに、表示 (Display as) を 「CDS translation」 にすると DNA配列と共にアミノ酸配列が表示され、各コドンが明瞭に解ります。大変便利なソフト・ウエアです。

2023年06月29日

NEB Cutter 制限酵素サイト検索


DNAを試験管内で操作するときに、制限酵素(DNA切断酵素)で処理して小さなフラグメントに分ける作業は重要な実験工程である。自分の持っているDNAにどのような制限酵素サイトがあるかを調べるのに便利なツールが制限酵素サイト検索ソフトである。その一つに New England Biolab 社が提供している NEB Cutterがある。とても便利なサイトである。
2023年06月30日

プラスミド類の入手/Addgene


必要な cDNA配列やベクター・プラスミドを購入するには、各種メーカーで検索して、購入することもありますが、非営利の研究機関ならば Addgene で入手することも有用です。Addgene と、それぞれの機関がライセンス契約を結ばなければなりませんが、今は、既に何処の研究機関・教育機関・大学でも一度は Addgene と結んだことがあると思いますので、大変な書類手続きでなく、僅かな書類申請だけで目的のベクターなどを入手できると思います。


2023年06月30日

学会報告2023ASH「転写因子を...」


疾患を治療する薬剤は、生体の細胞内の様々な蛋白を標的としています。薬剤が生体内の蛋白と結合することで、その効果を発揮しています。細胞内の遺伝子の発現を制御している転写因子と呼ばれる蛋白は重要な役割を果たしていますが、転写因子を標的とした治療薬の開発は、極めて困難だと言われて来ました。

しかし、サリドマイドという薬剤が IKZF という転写因子を阻害することが分かって以来、サリドマイドの性質を真似て、転写因子を阻害する薬剤を開発することが進められています。セレブロン蛋白結合型物質 (CRBN-biased ligands) が、その候補になっています。

2023年12月の ASH のプレナリーセッションの第2席で製薬メーカー・ノバルティス社より CRBN-biased ligands ライブラリーを用いた研究の成果を発表していました。

赤血球のヘモグロビンは、成人ではアルファ―型とベータ―型グロビンで構成されていますが、胎児期にはアルファ―型とガンマ―型です。出生後はガンマ―型の発現が完全に遮断されます。このガンマ―グロビンの発現の遮断のメカニズムは詳しく研究されて来ました。

発表によると、このガンマ―グロビンの発現を再開させる物質を探すために、上記のライブラリーを用いて薬剤を探索したそうです。その結果、ガンマ―グロビンの発現を復活させる物質を発見したそうです。さらに、その物質が結合する蛋白WIZを発見したそうです。

この WIZは今まで、まったく注目されてこなかった蛋白で、その機能は不明ですが、その構造から転写因子と推定されるそうです。また、このWIZがガンマーグロビンの発現の遮断において重要な役割を担っていることを突き止めたそうです。

CRBN-biased ligands ライブラリーを使って、今まで治療困難だった疾患に対して、その疾患の原因となっている転写因子を標的とした、有効な治療薬が次々と発見されることが期待されます。 

 

2023年12月22日