【学会参加報告】2025年 日本血液学会国際シンポジウム
2025年5月16・17日の両日に日本血液学会国際シンポジウムが佐賀大学医学部血液内科の木村晋也教授の下、佐賀県唐津市・唐津シーサイドホテルで開催されました。

この学会は国際学会のため、全ての発表(口演・ポスター)が英語で行われました。アメリカ血液学会(ASH)やヨーロッパ血液学会(EHA) とのジョイント・プログラムもあり、アメリカ・ヨーロッパの先生方が出席されました。また、中国・韓国・台湾・マレーシア・タイなどアジアからの先生方も多数参加されました。
アジアン・セクションからは急性前骨髄性白血病(APL)の研究・治療開発で世界をリードしている香港大学のGill 博士から最新の APL 治療のお話がありました。APL
は中国のWang 博士が、特効薬である ATRA と ATO を発見し、今では、この2剤の併用療法により95%以上の患者が治癒しています。
Gill 博士は、発症時の脳出血による死亡例や、治療開始直後の分化症候群(DS: Differentiation Syndrome)による早期死亡が、95%の治癒率を、更に改善できな理由だと話していました。
Gill H et al. Characteristics and predictors of early hospital deaths in
newly diagnosed APL: a 13-year population-wide study. Blood Adv. 2021 Jul
27;5(14):2829-2838. (ダウンロード無料)
更に、Gill 博士たちは内服ATO を開発し、内服のATRA と高容量ビタミンCの内服治療により APL を外来で(入院を最短にして)治療することが可能であり、99%の治癒率を達成していると解説していました。
Gill H et al. Acute Promyelocytic Leukemia Asian Consortium study of arsenic
trioxide in newly diagnosed patients: impact and outcome. Blood Adv. 2025
Feb 25;9(4):862-876.(ダウンロード無料)
日本でも、内服ATO, ATRA, 高容量ビタミンCの内服で、APLが香港大学で達成されている高い治癒率に到達する時代が来て欲しいと感じました。
アメリカからはニューヨークのスローン・ケタリング癌研究所病院のレソックフィン博士が多発性骨髄腫に対する BCMA二重抗体療法 Elranatamab
エルラナタマブの治療成績を示していました。再発・難治例に対して高い効果を示す反面、極めて重篤な液性免疫不全が起こり、グロブリン製剤の定期補充の重要性や、感染症管理の重要性が強調されていました。同様の
BCMA-CAR-T 細胞療法と比べても、極めて強い副作用が見られる様子でした。また、治療前の腫瘍量が多い症例では治療効果に乏しく、治療前の腫瘍量の削減が治療の成否を決める重要な因子かもしれないと話されていました。
レソックフィン博士のBCMA二重抗体療法 Elranatamab エルラナタマブの最初の論文
Lesokhin AM et al. Elranatamab in relapsed or refractory multiple myeloma:
phase 2 MagnetisMM-3 trial results. Nat Med. 2023 Sep;29(9):2259-2267.(ダウンロード無料)

これら以外にも多くの興味ある口演・ポスター発表がありました。ポスターの内容を若い発表者の先生方が、30秒で次々と発表するポスター・アブストラクト・フラッシュは斬新な企画で驚きました。特に「扮装」して発表する先生もいて、アブストラクトよりも扮装に目が行ってしまうことがありました。