現在・私たちの医学研究

最初に
現在、癌の発症の原因である遺伝子異常は、全ての癌で詳細に解析され、多くの癌において、臨床の場で、全て異常が完全に解析されています(遺伝子パネル検査・保険適応)。癌研究は、「原因の発見」から「治療の開発」へと歩みを進めており、各癌の弱点を狙った①分子標的療法薬の開発、癌の目印に蛋白を狙った②抗体療法の開発、人間の癌に対する免疫力を強める③免疫チェック・ポイント阻害薬の開発、そして人間の持つT細胞やNK細胞を体外で遺伝子操作して、癌に対する攻撃をプログラムした細胞に作り変える④免疫細胞療法(キメラ抗原受容体 CAR細胞療法)の開発が、その主流になっています。
CAR細胞療法の開発
我々の研究室では④のCAR細胞療法の改良型を開発しています。その基礎研究の成果の一部は科学雑誌に掲載され (Aoyama S et al. Int J Mol Med. 2022 Apr;49(4):42) 又、その技術は国内外で特許を取得しています。
 現在も、更に機能を向上させた新型CAR細胞の完成のために日夜努力しています。
CAR細胞とは
 1)癌細胞の表面に発現している蛋白(標的)に反応する受容体を作成する(CAR)。この受容体は、癌細胞を発見すると、
   攻撃シグナルと送る仕組みにする。
 2)このCARを、人の体から取り出した細胞に、体外で埋め込む (CAR細胞)。
 3)体内に戻った CAR細胞は癌細胞を発見すると破壊し、体の中の癌細胞を徹底的に駆逐する。
左:National Cancer Institute/ CAR T-cell therapy. https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/car-t-cell-therapy
右:ByLiza Torborg, Mayo Clinic Q and A: Treating blood cancers with CAR-T cell therapy.
December 14, 2018. https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/mayo-clinic-q-and-a-treating-blood-cancers-with-car-t-cell-therapy/
 私たちの開発した新型 CAR 
2種類のCARを作って、それぞれが異なる標的を認識するシステム(Double-Arm ダブル・アーム CAR)。この組み合わせが合致すると、攻撃シグナルが止まる仕組み。これを用いれば、癌細胞と正常細胞の表面に出ている蛋白のパターンを使って、正常細胞を攻撃せず、癌細胞だけを攻撃するCAR細胞が作れる。
Aoyama S et al. Int J Mol Med. 2022 Apr;49(4):42

更に開発を進め、癌細胞を効率的に駆逐し、しかし副作用の少ない CAR細胞を開発していく。