アメリカ人は風邪ぐらいで病院に行かない?アメリカの医療・コロナ禍の前と後。


日本で広く知られたアメリカにおける情報で「アメリカ人は風邪ぐらいで病院に行かない」というのがある。アメリカ人が高い医療費を恐れて風邪ぐらいでは病院に行かない、、、と間違った風説が日本では広まっている。

全てのアメリカ人が医療保険に加入し、高い保険料を毎月払っている。アメリカ人は「毎月・毎月、高い保険料を払っているんだから、(医療機関を)使わないのは損だ!」と感じている。アメリカの医療費の窓口支払い額(自己負担額)は全医療費の10%以下が標準なので、日本の3割負担と比較すると、その1/3 なので、とても安価である。いくら医療費の高いアメリカでも、日本の3倍も医療費が掛かることは無く(医療費のGDP比は、アメリカは16.6%、日本は11.5% であるから、アメリカの医療費は日本の1.4倍程度では無いだろうか?)、風邪で受診した時に支払う料金は1,000ー2,000円程度である。決して高い料金では無い。

しかし、アメリカの医療施設は、医師の過剰労働を防ぐために「完全予約制」になっているので、ネットや電話で予約を入れなければ決して診察してもらえなかった。そこで予約を入れようとすると(多くの外来担当医師の外来枠は常に一杯にされているため)どんなに早くても「3日後」という状態であった。直ぐに診てもらうには「救急外来」を受診しなければならないが、救急外来では入り口でトリアージ(重症度に応じた診療の順番の決定)されるので、「風邪」だと通常8-10時間待ちである(心臓病や脳出血・喘息・外傷などの緊急性の高い疾患の患者は待ち時間ゼロで直ぐに診てもらえる。重症患者が来ると、次々と順番が抜かされて軽症者は10時間待ちになってしまう)。

風邪くらいで10時間も待つのは馬鹿馬鹿しいので、高い保険料を払っているから、少しは使いたいのに、風邪くらいで病院に掛かりたいのに、泣く泣く、アメリカ人は風邪の時には市販薬を購入して自分で治療していた。当然、アメリカ人の医療への憎しみが増していく。高い保険料を支払わされているのに風邪の時に病院にも掛かれない、と。

ところが、コロナ禍で事態は一変した。風邪の症状でもコロナだったら死ぬことがある。特に50歳以上の男性は極めてリスクが高い。風邪症状でも病院で「当日」に診てもらうのが「当たり前」になった。当然、コロナに感染したら医療者も死ぬかもしれない。だから診療は全て「遠隔」になった。予約した当日に、コンピューターの画面を通して診療をし、検査結果と重症度に基づいて入院・帰宅を医師が指示する診療(Virtual Care)が標準になった。

コロナ禍が去った現在も、アメリカの医療は「コロナ禍で変化したスタイル」が定着している。アメリカ人は風邪で診療所での診察の予約を取る。オンライン診療(Virtual Care)を、予約した当日に、受けることが出来る。コンピューターの向こう側の医師が診察し、処方箋を書いてくれる。

「今」のアメリカ人は風邪の時にオンライン診療(Virtual Care)で病院・診療所の医師から薬を貰うのが当たり前になっている。

アメリカ人の医療に対する憎しみも少し減っている気がする。

 

2025年03月24日