日本は世界で最も高齢化が進んでいる国である。65歳を越える高齢者人口が国民の30%を占める。高齢者が多ければ死亡者数も大きくなる。同じ病気に掛かっても、高齢者は若い人に比べて治りが悪く死亡する確率が高い。日本では、他の先進国の比べて死亡率が高く、死亡者数は年々増加して来ている。周りから見ると「日本の医療の質が低い」から死亡者が多いように見えてしまうが、必ずしもそうではない。各国の高齢者比率を考慮に入れた調整した死亡率(年齢調整死亡率)を使って、各国の死亡率を比較しなければ、それぞれの国の「医療の質」は評価できない。
日本は粗死亡率(実際の死亡者数)は高齢化のために1990年から毎年上昇しているが、年齢調整死亡率は日本の医学の向上によって着実に低下している(新型コロナのパンデミックにより令和4年は僅かだが上昇が見られる)。

各国の医療の質を比較する時には、年齢調整や性別調整をして各疾患に対する治療成績の比較を行っている。日本は急性心筋梗塞に対する治療成績は、ここ10年で格段に良くなり、欧米と肩を並べるレベルになっている。

日本の脳梗塞に対する治療成績は非常に良い。

医療従事者の状況を各国で比較する時にも、まったく同じ条件で比較している。各国の現状を極めて正確に反映している。
日本において実際に医療に従事している医師(Practising doctors) の数はアメリカ・カナダ・韓国などと同程度である。

日本における実際に医療に従事している看護師(Practising nurses)の数も欧米諸国と同程度である。

日本の医療に従事している薬剤師(Practising pharmacists)の数は他の先進国に比べて跳び抜けて多い。

日本の医療費はアメリカを除く先進諸国と同程度である。(アメリカだけ跳び抜けて高い医療費が使われている)

各国で医療費の徴収法は異なるが、先進国では自己負担額は全医療費の10%程度である。90%は公的資金(税金(青色)・保険料(水色))から支出されている。日本は保険料(水色)として医療費を徴収するシステムになっている。

医療費の使い道は入院診療(Inpatient care)外来診療(Outpatient care)長期療養医療(Long-term care)などであるが、その比率は各先進国で、ほぼ同等である。

日本は病院(Hospital)で働く医師(緑 Physicians)の数がフランスやドイツと同程度で、アメリカやカナダに比べて多い。一方、日本では、医療に直接関わらないスタッフ(事務職員など)(深緑 Other staff)の数がアメリカ・カナダ・ドイツ・フランスに比べて少ない。

日本は世界で唯一、僻地(薄緑 Remote areas)に勤務する医師(Physician)数が、都市部(緑 Metropolitan areas)に勤務する医師数を上回っている国である。

日本は、韓国・カナダと並んで、国内全体で医師の分布が均等で、人口1,000人当たり2-3人である。多くの先進国においては、都市部では人口1,000人当たり4人以上の医師が勤務している。多くの発展途上国では医師不足が深刻である。先進国の中でオランダとイギリスは、僻地の医師数が1,000人当たり2を下回っており、深刻な僻地の医師不足を示している。

日本の医療状況は韓国とカナダに良く似ている。