DNA修復機構

 

地球上には紫外線や宇宙放射線といった危険物が大量に降り注いでいます。これはDNAに取って極めて有害な物質です。紫外線や放射線はDNAを切断する作用が強いので、生物は進化の中で「切断されたDNAを修復する機能」を獲得しました。

二重鎖螺旋(らせん)構造を取るDNAの損傷のパターンには①二本鎖切断②一本鎖切断③ミスマッチ異常④ピリミジン・ダイマー形成などがありますが、それぞれの損傷に対して修復機構が備わっているので、DNAの損傷は直ぐに修復されます。

CRISPR/Cas9 法は人工的に DNA の二本鎖を切断するシステムですから、切れた二本鎖 DNA (DDB: Double-strand DNA Break) は以下の2種の修復機構で修復されてしまいます。
  ①非相同末端結合 (NHEJ: Non-Homologous End Joining) 「名前」はぎょうぎょうしいですが、何のことは無い、切れた所を、そのまま繋ぐ修復機構です。
  ②相同組み換え(HR Homologous Recombination) ヒトのDNA は父方から1本・母方から1本の遺伝子もらっているので、常に1対(2本)の DNA があります。1本が切れたら、もう1本を見本として修復するという機構です。

CRISPR/Cas9 法で、ただDNA を切っただけでも、その切り口に異常が起きて、元の形とは少し違った形で修復されることもありますが、多くは「元通り」に修復されてしまいます。

2023年06月29日