CRISPR/Cas9_1

 

CRISPR/Cas9 法とは?

細菌から分離された Cas9 という酵素はDNA配列を切断する酵素です。この酵素は2種類の短い RNA (tracrRNA と crRNA) と複合体を作り、そのうちの1本の RNA (crRNA) の配列と相補的な DNA 配列を見つけて、そこに結合し、DNA を切断します。もともとは CRISPR と呼ばれるDNA配列領域から crRNA が合成されるものです。

 

 コスモ・バイオ株式会社のホーム・ページ「CRISPR-Cas9 基本の「き」」より
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/crispr-cas9-introduction-apb.asp?entry_id=15520

 この性質を利用して、複合体の中の1本の RNA (crRNA) 配列を替えることで、どのような DNA 配列でも切断できるようにしたシステムが CRISPR/Cas9 法です。

 「この DNA 配列を切りたい」と思った場所を自由に切ることは全ての科学者の夢でした。蛋白工学の知識を集約して「この DNA配列」を認識する蛋白(特異的DNA 配列結合蛋白)の合成に成功し、その技術を用いて DNA を切断する方法が開発されました(TALEN 法)。TALEN 法の普及のために、多くの DNA 配列に対する結合蛋白の開発が進んでいた2010年代初頭に、このCRISPR/Cas9 法が発表されました。

 TALEN法は、一つのDNA配列に対する結合蛋白を開発するために、数か月という長い時間と莫大な資金を必要としましたが、この CRISPR/Cas9 法は、TALEN法と同じことを、数日で可能にし、それも信じられないほど、僅かな資金しか必要としませんでした。

この CRISPR/Cas9 技術は、遺伝子改変マウス(ノック・アウト・マウス)の作成も、劇的に替えました。それまで2,000万円という資金と2年という時間が必要だったノック・アウト・マウスの作成が、30万円で、3か月という時間で作成することが出来るようになりました。

まさしく、この技術は「革命」でした。

あまりに簡単に・自由自在に DNA の切断が出来るようになったので、現在では、この技法を「ゲノム編集」技術と呼ぶようになっています。

 

2023年06月26日