韓国の医師のストライキ


2024年2月に、韓国政府が発表した医学部の定員数の大幅な増員(入学者数を3,000人から5,000人に増員)を進める法案に抗議して、若い医師を中心にストライキが行われている。多くの研修医が辞表を提出して職場を放棄して、韓国の医療現場は混乱に陥っている。

日本と韓国では医療資源(Health System Resources) の各項目で似たところが多数ある。

日本も韓国も国民 1,000人当たりの医師数は 2.6 とアメリカ(2.7)・カナダ(2.8) と同程度であるが、イギリス(3.2)、フランス(3.4)、イタリア(4.3)、ドイツ(4.5) などヨーロッパの先進国に比べると少ない。(2023年のデータ)高齢化が急激に進んでいる韓国では、医師の増員が望ましいと考え、韓国政府は医学部定員数の大幅な増加を決定しようとしている。

日本も韓国も病床ベッド数が非常に多い国である。韓国は人口 1,000人当たりのベッド数が12.8床と、日本の12.6床と並んで、他国を引き離して極めて多い。第3位のロシアのベッド数が 8.0であり、先進7カ国G7のドイツ(7.8)とフランス(5.7)と比較しても日韓のベッド数は多い。他のG7の国であるイタリア(3.1)、アメリカ(2.8)、カナダ(2.6)、イギリス(2.5)のベッド数は更に少ない。日本と韓国のベッド数の多さが際立っている。(2023年のデータ)

ただ、韓国は病床ベッド数は多いが、患者の入院期間は7.6日と他の先進国と同様である。その点、日本は16日とOECD加盟国中最長であり、2位のポルトガル9.2日を大きく引き離して際立って長い。(2023年のデータ)

日本も韓国も女性医師の比率が、22%・24%であり、他国に比べて際立って低い。日本はOECD加盟国中最下位であり、韓国は最下位から2番目である。最下位から3番目のルクセンブルグは36%を示していた。他のG7先進国はアメリカ(37%)、イタリア(44%)、カナダ(44%)、フランス(46%)、ドイツ(48%)、イギリス(49%)と女性医師の比率が高い。(いずれも2019年のデータ)

医療支出はGDP比で日本が世界4位の11.5%であり、韓国は18位の 9.7%であるが、韓国における医療費の自己負担率は 29.1% と他国に比べて極めて高い(日本12%、アメリカ11%、カナダ14%、イギリス14%、フランス8.9%、ドイツ12%、イタリア22%)。

医療者によるストライキは日本でも1960年に始まり6か月間続いた病院ストを皮切りに、1961年・1969年の全国一斉休診ストなど、大規模なものから小規模なものまで多数行われてきた歴史がある。

2006年3月にはドイツにおいて、大学病院に勤務す1万5千人の医師による、労働時間の削減と賃上げを求める大規模ストライキが起きた。引き続いて6月には700の一般(市民)病院で働く7万人の医師による、労働条件改善を求めるストライキが起きた。
Doctors on strike--the crisis in German health care delivery. N Engl J Med. 2006 Oct 12;355(15):1520-2.  

2024年02月26日