日本の医療制度・世界との比較


不幸にして、現在の世界には「完璧な医療体制」を持つ国は無い。

そのため、世界の国々は、世界保健機構 (WHO) が中心となって、より良い未来を目指して、休むことなく医療体制の改善に取り組んでいる。

医療体制や、それを取り巻く法律、さらには医療にまつわるデータは年々変化している。なので、10年前・20年前の教科書を引っ張り出してきて、日本や世界の医療体制の知識を学ぶことは大きな間違いを生むので、決して行ってはいけない。

公衆衛生学にまつわる知識も、臨床医学や基礎医学のように日々、進化しているので、常に最新のデータを身に付ける必要があり、一度記憶したことを「変わることのない真実」と思って一生て抱えて生きることは、医療者としては愚の骨頂であり、行ってはならない。常に新しいデータを検索することが重要である。

全ての国民が平等に医療にアクセスできる制度・皆保険制度(Universal Health Care UHC) を世界で最初に確立したのはソビエト連邦である。第二次世界大戦前の1937年に確立させている。日本を含めて世界の国々は第二次世界大戦(1945年に終結)の中、大きな混乱の中にあり、UHC の確立までには少し時間が掛かった。特に日本は第二次世界大戦後、極めて劣悪な経済状況・医療状況にあったため、医療体制の改善には多くの時間を要し、他の先進国に遅れ、UHC を取り入れることが出来たのは1961年のことである。

現在、世界の多くの国(59か国以上)は UHC を有しており、日本も、その一つである。日本の医療保健体制は先進国の中では標準的なものと思われる。

アフリカ大陸の国々や東南アジアの国々の中には経済的な困難や不安定な国家体制(内乱や独裁体制など)のため UHC が施行されていない国が多い。米国や中国・インドのように経済的に豊かで国家体制が安定した国であっても、国の方針として法律で皆保険制度を規定しない国もあり、各国の医療体制は、それぞれに異なる。しかし、 WHO は全ての国に UHC が行き渡ることを目指している。

医療の進歩と普及により多くの国で医療費は国民にとって大きな負担になっている。各国の医療費を比較するときに、各国の GDP(国内総生産)に占める医療費%で表現するのが一般的である。

2022年現在、OECD(経済開発協力機構)に加盟している、先進国ならびに政治体制の安定した発展途上国・38カ国は様々なデータを提供して、その国の現状を公開している。これによると GDP に占める医療費(Health Expenditure as a share of GDP) は、米国の16.6%を筆頭に、2位ドイツ12.7%、3位フランス12.1%、4位日本11.5%と続く。

(参考資料 
  GDPの高い国々 (2022)アメリカ26.19兆ドル(中国19.24兆ドル)日本4.37兆ドル ドイツ4.12兆ドル(インド3.82兆ドル)イギリス3.48兆ドル フランス2.81兆ドル カナダ2.30兆ドル

  先進国G7のGDPに占める軍事費/防衛費%(2022) アメリカ3.45% イギリス2.23% フランス1.94% イタリア1.68% ドイツ1.39% カナダ1.2% 日本1.08%)

個人が医療機関の窓口で支払う自己負担額(out-of-pocket fee) は、日本を含めて、どの国でも全医療費の10%程度であり、残りの90%は保険料や税金から支払われている。

イタリアを除くG7 (先進7カ国)や福祉制度の充実した北欧の国々の医療費は10%を越えているので、日本の医療費は先進国としては平均的なものと思われる。

https://www.oecd-ilibrary.org/sites/d5dbe32a-en/index.html?itemId=
   /content/component/d5dbe32a-en

 

 

OECD iLibrary /Health expenditure in relation to GDP より抜粋

2024年01月12日