アメリカの救急車は どれくらい高い?


「アメリカでは救急車は有料」「病気をした時でも、救急車の料金は高いから、患者は『救急車は呼ばないで!』と言う」という話を聞いたことがある日本の方は多いと思います。

 アメリカの救急車は、どれくらい高いのだろう?と疑問に思っている人は多いでしょう。また、アメリカを旅行で訪れると、救急車が走っているのを見かけることがあります。そんな高い救急車の料金を、どうやって払っているのだろう?と疑問に思う人も多いでしょう。

 救急車を呼ぶと、救急隊と救急車が駆け付けます。そして、患者に基本的な医療処置をして近隣の救急病院まで搬送します。救急車を呼んで、救命蘇生(心臓マッサージなど)をしてもらって、搬送してもらうと平均で1,300ドル(20万円)の請求が来ると言われています。このうち、救命措置が850ドル(14万円)・搬送料が450ドル(6万円)だとされています。


 もし、救命蘇生措置を行わなずに搬送料だけなら450ドル(6万円)になるわけです。搬送料は、移送距離により料金が上がり、夜間・深夜の割増料金も加算されるので、何キロくらい離れた病院に運ばれたか?何時ごろに運ばれたか?で多少料金が変わって来ます。搬送料金としては「タクシーの10倍の値段」という感じになると思います。

 さて、支払いですが、患者が救命救急病院に運ばれ、医師が診察して「救急搬送が必要な重い疾患であった」と判断すると、その事が書類に書き込まれ、全額(あるいは9割)を保険会社が支払ってくれます。ですので、1,300ドル(20万円)のうち2万円の負担、あるいはゼロです。救命蘇生措置が行われなければ、請求額は450ドル(6万円)の1割の6000円あるいはゼロです。

 救命蘇生措置が必要なほどの重症な状態であれば、必ず医師は「重い病気」と判断し、保険会社が支払ってくれます。問題なのは「救命蘇生措置が必要なさそうな軽い病気」の場合です。この場合に、もし、保険会社の支払いが無ければ、450ドル(6万円)の救急車使用料を自分で支払わなけれななりません。お金に余裕のある人なら、6万円の搬送料は、高額ではありますが、払える額かもしれません。
 しかし、一般の方は「救命蘇生措置は必要なさそうだ」と感じ、「タクシーを呼んで病院に行けそうだ」とか「家族に運転してもらって、病院に行けそうだ」と思ったら、6万円も掛かる救急車を呼ぶことはありません。

 ちなみに、アメリカでは病院で治療を受けた後に、多くの場合、病院窓口での支払いはゼロか、5-20ドルのビジット・フィー(外来訪問料)だけです。後日、救急車の会社や保険会社から請求書が郵送で自宅に届きます(病院から請求書が届くことはありません。病院は請求書を保険会社に送り、支払ってもらっています)。

 救急車の会社からの請求が届くと緊張しますが、それを開いた時に「救急搬送料 ゼロ」と書いてあると、少しホッとします。

 時々ですが、救急の医師が、救急室の忙しさのために救急隊への書類を十分に書き込んでいない時があり、重い病気で救急病院を受診したにも関わらず「高額な救急搬送料金」が請求されて来ることがあります。そんな時は、救急病院の医師宛にメールで、請求書のPDFファイルと、サービス番号(処置番号)と名前やID 番号・受診日などを書いて「高額な救急搬送料の請求が来ています。書類上の間違いでは無いでしょうか?ご確認願います」と書いて送ると、医師から「私の記入ミスです。その料金は支払わないで下さい。至急、救急車の会社への書類を修正して、救急車の会社から新しい請求書が行きます」というメールの返信があって一件落着します。

 忙しい救急病院の外来では、書類の不備は頻繁にあることなので、患者は、その都度、確認のメールを送って修正してもらいます。(多くの病院が、電話ではなく、メールでの遣り取りで対応してくれています。メールでの病院との遣り取りは公文書・正式書類として取り扱われます) 

このようなシステムのために、アメリカでは、軽い病気で救急車を呼ぶ人は居ませんし、高額な救急搬送料を支払う人もいません。

 日本で良く見られることですが「どこの病院に行ったら良いか分からないので救急車を呼んで連れてってもらおう」「救急車で受診すると最優先で診てもらえる」というのがあります。

 が、アメリカの場合「救急病院」と看板を掲げている病院であれば、自家用車や徒歩で受診しても「救急科」を受診すれば、必ず診療してくれます。医師・看護師が直ぐにチェックして、その救急病院で対応できない疾患や症状であれば、対応可能な病院を、その病院のスタッフが捜してくれて、その病院への受け入れの可否まで確認してくれます。必要があれば救急車で、その病院まで送ってくれます(アメリカでは、法律で「対応可能な他の医療施設への受診まで調整すること」が各医療機関に義務付けられているので、「後は自分で捜して下さい」などと放り出されることはありません)

 また、救急車で受診した患者でも、医師・看護師が直ぐに「トリアージ」という重症度による診察の優先順位が付けられるので、重症度が低いと判断されると、後回しにされ、先に治療を受けることは出来ません。

2024年03月22日