学会報告2023ASH「難治性GVHDの...」


同種造血幹細胞移植後の合併症の一つに宿主片対宿主病 (GVHD: Graft versus Host Disease) がありますが、通常、副腎皮質ステロイド・ホルモンによる治療が試みられます。

 ステロイド治療に抵抗性を示す難治性の GVHD に対する治療法として有効性が確立しているのは JAKキナーゼ阻害剤だけでしたが、今回、2023年12月の ASH で驚異的な有効性を示す薬剤の紹介がプレナリーセッションの第1席でありました。

 今まで、GVHDの本体は、移植したT細胞による細胞障害であると考えられており、T細胞の活性を下げる副腎皮質ステロイドや JAK阻害剤が使用されていましたが、今回、単球・マクロファージ細胞を標的とした 抗CSF1受容体(M-CSF-R) 抗体 Axatilimab アキサチリマブが、難治性GVHDに優れた効果を発揮することが示されました。

特に腸管のGVHD や線維化した組織に対して有効性を示すことが発表されました。更に、驚いたことに、少ない量の治療薬の投与の方が、治療に反応する例が多く、逆に、量を増やすと、治療に反応する例が減ることが紹介されました。

炎症性の疾患は、強く治療すると、却って、炎症の悪化を引き起こすのかもしれません。

今後は、多くの炎症性の疾患に 抗CFS-1受容体抗体が治療薬として試されて行くのかもしれません。

2023年12月22日