多発性骨髄腫は高齢者に発症することが多い血液の病気だが、65歳以下の比較的若年の方に発症することもある。この場合、ヨーロッパとアメリカでは治療法に大きな差がある。
アメリカでは、65歳以下の患者に関して、最初の抗癌剤治療で、十分な治療効果があれば、直ぐに自家造血幹細胞移植を行う。一方、ヨーロッパでは、再発時に移植を行うのが一般的で、いきなり移植は行わない。この2種の治療は、治療効果の点では同等である。
今回2023年10月の日本血液学会にはアメリカを代表する骨髄腫の治療の専門家である、アメリカ西海岸・サンフランシスコのカリフォルニア大学(UCSF) のウォルフ先生と東海岸・ボストンのハーバード大学のリチャードソン先生が参加していた。
ウォルフ先生の御講演の後の質疑応答で、突然、リチャードソン先生が手を挙げて質問した。このような国際学会で、疾患の「大家」の先生同士が議論しあうことは良く見られる光景である。
リチャードソン先生が「君の所では、標準リスクで、残存病変(MRD) 無し(陰性)の骨髄腫の患者の治療はどうしている?移植はするの?」と質問した。
するとウォルフ先生は「造血幹細胞の採取と保存をして、経過を見ることにしている。移植は、いきなりはしない」と答えた。それに対して「私の所も、まったく同じ方針にしている」と胸を撫で降ろすようにリチャードソン先生が答えた。
どうも、アメリカも、ヨーロッパ流に変更している様子だった。