フィラデルフィア染色(Ph t(9;22)) 陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL) は治療が極めて難し白血病だったが、Ph染色体上の BCR-ABL チロシンキナーゼが白血病において重要な役割を果たしていることが明らかとなり、BCR-ABLチロシンキナーゼ阻害剤(TKI) が開発されて以来、その治療成績が急激に改善してきた。
2019年1月にBlood誌に Ravandi F 博士が「How I treat Philadelphia chromosome–positive acute lymphoblastic leukemia」で治療の指針を示した以降も、様々な治療戦略が比較され、2024年12月のアメリカ血液学会(ASH) 学術集会では Luskin MR 博士が「Educational Program」の「Ph+ ALL: new approaches for upfront therapy」で大幅に改定された治療指針を示した。
更に2025年1月のBlood誌では Chiaretti S博士とFoà R博士から最新版の「How I treat adult Ph+ ALL」の発表が成された。
Ph+ALL の治療は 4年前の治療法が「時代遅れになる」ほどのスピードで進化している。
最新の治療指針によると、寛解導入療法は TKI と弱い化学療法(ステロイド単剤やステロイドとビンカアルカロイドによる治療、あるいはステロイドと特異二重抗体薬ブリヌツマブ)の組み合わせによる治療を行い、地固め療法にはTKI単剤あるいは抗がん剤治療あるいはブリヌツマブあるいは同種造血幹細胞移植が推奨されている。
ただ、この推奨は2024年までのデータを基にするものであり、推奨は更に変化して行くだろう。更に、この推奨は IKZF Plus などの遺伝子異常の検出ができるか(日本では不可能)、微量白血病の検出が出来るか(日本では可能)、第3世代TKIが入手可能か(日本では可能)、ブリツヌマブの入手が可能か(日本では可能)などの諸条件があり、全ての国で、推奨された治療が行える訳では無い点に注意が必要である。
以前(2019年)は、強力な抗がん剤を繰り返し、最も強力な抗がん剤治療である同種造血幹細胞移植を行うのが標準的な治療戦略であるとされて来たが、ここ数年で、その治療戦略は「Chemtherapy-free
無抗がん剤」治療/ より強度の低い治療にシフトして来ている。
Ph+ALLの治療戦略は、ここ数年で、パラダイム・シフト(大転換)が起きているので、日本も欧米の技術に置いて行かれないように整備が必要である。
Luskin MR. Ph+ ALL: new approaches for upfront therapy. Hematology Am Soc
Hematol Educ Program. 2024 Dec 6;2024(1):78-85.
Kantarjian H et al. Results of the Simultaneous Combination of Ponatinib
and Blinatumomab in Philadelphia Chromosome-Positive ALL. J Clin Oncol
2024 Dec 20;42(36):4246-4251.
Chiaretti S and Foà R. How I treat adult Ph+ ALL. Blood. 2025 Jan 2;145(1):11-19.