カヘキシア(日本語訳 悪液質)は一般の方には馴染みの無い言葉だと思います。これは癌患者さんが急激に痩せてしまう状態を指す言葉です。
癌患者さんの中には、癌細胞が毒素を出し、食欲が減り、体脂肪や筋肉量が急激に減ってしまう方がいます。周りから見ていても、可哀そうなくらいに痩せが目立ってきます。
この状態(癌カヘキシア)を良くするには、手術や抗癌剤治療などで癌細胞を破壊・除去することが最良の方法ですが、不幸にして、治療が効かない方、癌を治すことが出来なくなってしまっている方も多いです。
このように癌の治療が出来なくなった方でも、できれば、体力を十分に保って余生を有意義に過ごしてもらいたいと多くの医療者は感じています。その際にカヘキシアは大きな問題となっています。
今回、癌カヘキシアの治療に有効な薬剤の報告がありました。
Groarke JD et al. Ponsegromab for the Treatment of Cancer Cachexia. N Engl J Med. 2024 Sep 14.
癌カヘキシアの原因には、癌細胞などが分泌する様々な物質が関与していると考えられ、今回の治療薬が作用する、GDF-15という物質も、カヘキシアを引き起こす物質の一つと考えられています。GDF-15 が高値を示す癌患者さんでは、このPonsegromab(ポンセグロマブ)という薬剤が高い効果を示したとされています。
カヘキシアの治療薬としては、日本においてはアナモレリン塩酸塩(商品名 エドルミズ)というグレリン様作用薬が市販されていますが、欧米においては、臨床試験で効果が十分には認められず、使用認可は下りていません。
厳しい欧米の基準でも上記のポンセグロマブは高い効果を示しており、市販されることでしょう。
この薬が多くの癌患者さんのカヘキシアを改善してくれることが待たれます。