アルツハイマー型認知症のバイオマーカー


日本は高齢化が進んでおり、今後、アルツハイマー型認知症が増えることが心配されている。

認知症には主なものに4種類ある。
  1)アルツハイマー型認知症
  2)血管性(脳卒中後)認知症
  3)レビー小体型認知症
  4)前頭側頭型認知症

アルツハイマー型認知症が最も多く7割を占める。脳卒中後に認知症になる血管性認知症も2割程度と多い。3)4)は稀な認知症である。

アルツハイマー認知症は脳の中にアミロイド・ベータという蛋白が蓄積し、神経原線維変化(=リン酸化タウ蛋白の蓄積)が見られる。多くの脳の病気の特徴だが、なぜ、このような蛋白が脳に蓄積するのか不明である。高齢化しても脳に蓄積が起きない人(認知症にならない人)もいる。

また、これも脳の疾患の特徴だが、脳は重要臓器なので、簡単に脳の一部を切り取って調べることが出来ない。病状が進行すれば典型的な脳の萎縮を脳MRI検査で検出できるが、初期の場合はMRIなどの画像検査では診断できない。

なので、アルツハイマー型認知症の診断は「xxxという症状があるか?」「記憶力が落ちてきているか?」などという「症状」によって診断することになる。

癌の腫瘍マーカー検査のように血液検査で病気の状態を知ることが出来れば良いが、そのようなもは今まで存在しなかった。そんな中、2024年2月に中国の研究者からアルツハイマー型認知症のバイオマーカー(=検査項目)を発見したとの報告があった。

Biomarker Changes during 20 Years Preceding Alzheimer’s Disease. J. Jia et al. N Engl J Med 2024;390:712-722.

アルツハイマー型認知症が従来の方法で診断される
 18年も前から脳脊髄液の中のアミロイド・ベータ42が低下し
 14年前からアミロイド・ベータ42と40の比率の変化(低下)が見られ、
 11年前からリン酸化タウ181の上昇が見られ、
 10年前からタウの量が上昇し、
 9年前から神経原繊維軽鎖の上昇が見られ、
 8年前から画像診断で脳の海馬の領域の脳の量が減少し始め、
 6年前から認知力の低下が始まる

との事である。

多くの国で、この結果に関して、同様の検査を行い、この結果の信頼性が確認されるだろう。

2024年03月04日