文章による説明になるが,実物など研究室にあるので,どうぞ,気楽に見学しに来て下さい。
電動車 vs. 健康促進
現在市販されている電動カートは,高齢者の移動補助に主眼をおき,ドライバーの健康維持に関する考慮は欠如している。その結果,長期間にわたり電動カートを使用すると,下肢を動かさなくなるため,身体能力がさらに低下する恐れがあり,長い目で見ると,必ずしも高齢者への生活自立をサポートすることになるとは言えない。
本研究は,高齢者の持つ残存能力を積極的にかつ無理せずに引き伸ばし,運動機能の維持・増進により,加齢による運動能力の低下を積極的に防ぐことを目指している。
まず,ペダリング運動に注目し,運動機能の維持・増進へのペダリング効果をバイオメカニズム的に検討する。その研究結果をもとに,老化を防ぐ方策をまとめ,それを実現する新しいコンセプトの電動カートシステムを設計・試作する。
本研究は以下のように進める:
1)トレーニング効果とべダルの種類との関係解明
高齢者の立場から見たペダルの種類(直動型,回転型)とトレーニング効果との関係,姿勢とペダル位置との関係,ペダルの種類と漕ぎやすさなどについて,実験をもとにバイオメカニズムの立場から解明する。
2)健康状態に配慮した負荷オートチューニングシステムの開発
無理なトレーニングをせずに,最適なペダル負荷が搭乗者に印加できるために,搭乗者の身体状況データをリアルタイムで検出し,それに応じた最適な負荷を生成する負荷オートチューニングシステムを構築する。
アクティブ音場制御
二次音源を用いて騒音を除去するアクティブ騒音抑制手法は,近年注目されている。騒音抑制コントローラの設計において,いままで適応制御,予測制御,最適制御,ロバスト制御などのシステム設計手法が用いられてきた。
本研究では,本研究室で独自に開発した「等価入力外乱推定」という新しい手法を用いて音場制御コントローラを設計し,消音効果を検証する。従来の手法に比べ,本手法は以下の特徴を持っている:
1)システム構成が簡単
2)出力の微分値を必要としない
3)騒音抑制性能が見通しよく設計できる
また,人間の聞こえる音の周波数範囲はおよそ20 kHzまでである。本手法を用いれば,人間の聴力を考慮した騒音抑制,または指定される不快感をもたらす周波数帯域の騒音抑制も可能である。それに関しても実験により検証する。
Acrobotの制御
2000年7月に米国食品医薬品局(FDA)がロボット手術装置「ダビンチ手術システム」を認可して以来,手術ロボットに関する研究開発およびその実用化は急速に進んでいる。2004年現在,世界で196台の手術ロボットが稼動しており,その中,日本では9台稼動している。
手術ロボットは,人間の腕の代わりに,ロボットアームを用いて手術を行う。従来の手術に比べ,ロボット手術は,ロボット操作の精密性を生かし,きずを小さく開け,手術侵襲を少なくして患者負担が低減できる。また,手術のヒューマンエラーをなくし,安全・正確である。なお,手術成績にばらつきもない。
器用かつ高速に動くために,ロボットを小さくまとめる必要がある。そのため,安全性を保証し運動機能を確保するもとで,駆動装置をなるべく減らさなければならない。その結果,一般的に,ロボットの持つ自由度に比べ,ロボットの駆動できる自由度が少ない。その代表的な一例として,Acrobotが挙げられる。Acrobotは,関節が2つあるが,駆動する関節は1つしかない。このようなシステムはノンホロノミックの制約を受けるため,その運動制御は難しい。
本研究では,次のことを狙っている:
1)最適運動パターンの検討
2)最適運動パターンの手術ロボットへの応用
本研究では,本研究室で独自に提案した「仮想時間」という概念を用いて,Acrobot運動の最適化問題を解く。
技術中国語のe-learningシステム
中国の経済開放に伴い,中国に進出する日本企業は増加の一途をたどっている。現地生産をスムーズに行うために,企業は技術者を中国に派遣し,通訳を通して現地指導を行っている。しかし,ほとんどの日本語通訳は文科系出身者であり,科学技術などの専門知識に乏しく,技術系の言葉を正しく通訳できないという問題点が多く生じている。さらに,現在中国における日本語の通訳・翻訳などの人材が深刻に不足しており,重大な問題となっている。そのため,現地でスムーズにコミュニケーションをとるために,中国に赴任する前に,技術者に基本的な技術中国語用語と中国語による技術の説明の仕方をマスターしてほしいと多くの企業から要望されている。一方,技術中国語の教材作成について,従来の日常中国語教材の作成に比べ作成が遥かに難しいため,関連研究はまったく行われていないのが現状である。
本研究は,このようなニーズに答えるためのものである。教材の作成に際して,現在,紙ベースの中国語教科書が広く使われているが,表現の多様性,直感性,学習意欲の喚起とわかりやすさなどの面において,マルチメディアコンテンツの方が遥かに有利であるため,本研究は様々な画像・音声コンテンツを融合したWeb教材を作成する。また,マルチメディア教材の新しい設計理論に基づき,高い学習効果が得られるように教材構成の設計を工夫する。
学習者の多様性を考慮し,どこでもいつでも自由に勉強できるように,Web教材の特徴を生かしたe-ラーニングシステムを構築し,学習の自由度を持たす。
e-ラーニングの問題点として一人だけで勉強を持続するのは難しいと指摘されている。本研究ではBBSを使って学習者同士でのディスカッションの場を設ける。また,各レッセンの最後に自分の理解度を確認するテストを設け,e-ラーニングシステムがテスト結果に基づき適宜な学習アドバイスを与えるように,エキスパートシステムにより本学習システムを構築する。
その他
本研究室では,上で説明した研究以外に,
1)ロバスト制御理論とその応用
2)むだ時間システム
3)繰返し制御・学習制御
4)エキスパート制御
5)メカトロシステムの高精度化・高性能化
などの研究も行っている。興味のある人は気楽にお訪ねください。